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主張力の強い表現 |
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長谷川 武久
『 ショパン 』(2002年8月号) |
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・・・この日はバッハ(ブゾーニ編)のシャコンヌ、スクリャービンのソナタ第3番、スクリャービンの練習曲を2曲、ラフマニノフのソナタ第2番ほかを演奏した。まず、バッハで刮目させられた。鋭角的な音づくりで、隙なく築き上げていく。硬質であり、たたみこんでいく迫力に呼吸づまるものを感じたが、これは文字通り<ザラフィアンツのシャコンヌ>として独特の世界の存在が感じられた。スクリャービンのソナタも、彼ならではの感性をめぐらせた、尋常ならざる演奏。主張力の強い表現で緊張感を生んでいくが、特に終楽章は鮮烈であった。後半スクリャービンの練習曲2曲は音が明るくなり、より一層の整理は望まれたが、明解。ラフマニノフの2曲の小品も勢いのある演奏で、ザラフィアンツらしい魅力は充分に感じられた。最後のラフマニノフのソナタ第2番も、たくましいテクニックで乗り切っていく。その中に、どこか孤独な不安が滲むあたりも、この人ならではの魅力と言えようか。和気を加えてほしいと思える場面もあったが、この個性もまた貴重だ。 |
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(2002年4月29日 紀尾井ホール) |
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濃厚でクセの強い表現 |
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原 明美
『音楽の友』(2002年7月号) |
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・・・プログラムは、バッハ(ブゾー二編)の「シャコンヌ」、スクリャービンの「ソナタ第3番」、「練習曲」Op.8の12およびOp.2、ラフマニノフの「V.R.のポルカ」、「前奏曲」Op. 32の5、「ソナタ第2番」というもの。豊かな音量で歌う彼のピアノは、情熱を帯び、感情移入が激しい。その濃厚でクセの強い表現については、好みが分かれよう。なお、テンポの揺れが激しいことに起因して、時として流れが停滞気味あるいは締まりをを欠いてしまう点については、解決すべき課題と言えるだろう。 |
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(2002年4月29日 紀尾井ホール) |
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聞き手の心により添ってくるようなピアノ |
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青澤 唯夫
『音楽現代』(2002年8月号) |
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・・・バッハ/ブゾーニ編のシャコンヌ、スクリャービンのソナタ第3番、練習曲2曲、ラフマニノフのVRポルカ、前奏曲、ソナタ第3番などを弾いたが、主情的な個性的表現に特徴があり、一部に熱狂的なファンがいるのも頷ける。独特な間合いをとった、機会的な冷たさのない、聞き手の心により添ってくるようなピアノで、スクリャービン、ラフマニノフはよく弾き込まれ、彼自身の自在な音楽になりきっていた。バッハの「シャコンヌ」では、重い響きのなかに歌ごころが現れていた。ラフマニノフのト長調(作品32の5)の前奏曲での優しさにみちた抒情、ソナタ第2番の劇的な表情に富んだシリアスで激しい演奏が出色だった。 |
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(2002年4月29日紀尾井ホール) |

強力なテクニック、掘り込みの強い音楽
長谷川 武久
『 音楽の友 』(2000年7月号)
・・・プログラム前半はザラフィアンツのソロでスカルラッティとラフマニノフの作品が演奏された。強力なテクニックを持ったピアニストである。音も、しっかりした芯が存在し、上辺を美しく装うだけでは終わらないという面があり掘り込みの強い音楽をやっていこうとしている。
スカルラッティのソナタでも軟弱ではなく、彼なりの個性で色づけしていこうとしていたが、続くラフマニノフでこの人の本領は、よく発揮されていたようだ。どちらかというと横の流れよりも縦の方向が重視され、隙なくゆるぎない表現を建て上げる。このラフマニノフのピアノ・ソナタ第1番、大作だし難曲だが、それをみごとに奏し切った力量は高く評価したい。
プログラム後半は天満敦子(Vn)が登場し、バッハの「シャコンヌ」とプロコフィエフのソナタ第2番を演奏した。バッハは遠近感のある表現であり好演。プロコフィエフではこのピアニストの、共演者に対する濃やかな心も聴き取れた。 (2000年4月24日 カザルスホール)
濃密なロマンを溢れさせて力演
壱岐 邦雄
『 ムジカノーヴァ 』(2000年7月号)
前半はザラフィアンツのソロでスカルラッティの《3つのソナタ》とラフマニノフの《ソナタ第1番》。 後半は天満敦子のソロでバッハ《シャコンヌ》にはじまり、ついでザラフィアンツとのデュオでプロコフィエフの《ヴァイオリン・ソナタ第2番》とポルムベスク《望郷のバラード》。
スカルラッティはテンポが極端に遅く、ほとんど解体寸前。濃やかなダイナミクスでテンポを大きく伸縮させ、トリルをメッサ・ディ・ヴォーチェのように奏でる。このあたりいかにも鬼才ザラフィアンツらしくユニークの極み。でもスカルラッティでなぜ?の疑問は残る。
そこへいくとラフマニノフは説得力満点。第1楽章と第3楽章は豊かなソノリティでエネルギッシュに、でも音の洪水のなかに主題を溺れさせることなく弾き進み、第2楽章は大河のごとく滔々と流れて圧巻。自意識過剰気味のこのソナタを冷徹に分析しつつも濃密なロマンを溢れさせての力演であった。
《シャコンヌ》は天満敦子の分厚い美音がプゾーニ編曲のピアノ版を思わせて響いた。プロコフィエフはピアノともども豊麗濃密。原曲 (フルート・ソナタ) のモダニズムやリリシズムにかわってこの作曲家のメロディストとしての特性が際立った。《望郷のバラード》は十八番とあって天満敦子、こぶしをたっぷりときかせてまさにルーマニアの演歌の趣。客席から声援がかかったのも、当然。 (2000年4月24日、カザルスホール)

エフゲニー・ザラフィアンツ プレイエルを弾く
壱岐 邦雄
『 MUSICA NOVA 』(2002年1月号)
フランスのプレイエル社製ピアノを弾いてのコンサート。この楽器、音が薫り立って高雅端麗、いかにもハイソサエティ・ヨーロピアンの味わい。おまけに閑静な住宅街にあるこじんまりとしたホールということもあって、会場はどこかサロン風の雰囲気。でも内容は本格的。
ザラフィアンツはロシア出身の42歳。旧ソ連時代は危険分子とみなされてモスクワ音楽院への道を閉ざされたり活動を制限されたりしたが、ソ連崩壊後の93年ポゴレリッチ・コンクール2位で広く知られるようになった実力派。97年以来毎年来日していて、ラフマニノフ、スクリャービン、ショパンなどのCD数枚が紹介されている。
当夜のプログラムは前半にベートーヴェン(《告別》ソナタ)、ショパン(《舟歌》とバラード第3番)、スクリャービン(エチュード2曲)をならべ、後半はオール・ラフマニノフ(《V.R.のポルカ》と前奏曲ト長調、ソナタ第2番)というもの。
ザラフィアンツのピアニズムの特長のひとつは肌理(きめ)細やかで幅広いグラデーションのダイナミズムにある。前半ではゆるやかに大きなアーチを描いてのスクリャービンにその本領が発揮され、魅せた。
後半は休憩時間中に入念な再調整がなされてプレイエルの音の抜けがさらに良くなり、より端麗なソノリティとなって響いた。演奏も得意のラフマニノフとあってザラフィアンツ、いちだんと気合いが入っての熱演。とくにソナタはダイナミズムの魅力とともに、密集した音群を団塊とさせることなく有機的に結びつけて響かせながら密度の濃い音楽を奏で、またときに顔面を紅潮させてのヴィルトゥオーゾぶりをも輝かせての名演、圧巻。
小さなホールを《音響》ではなく《音楽》で満たしてザラフィアンツ、堂々充実のリサイタルであった。
(2001年11月9日 東京荻窪 ・ かん芸館 )
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